08.jpg吹抜とトップライトから光が落ちる私達が住まいの設計の中で大切にしていることの一つに「心地よさ」があります。これには心理的側面と物理的側面があると思いますが、今回は物理的な面に視点をあてて考えてみたいと思います。

多くの人は、冬は日の光が差し込む明るく暖かな部屋、夏は風の通る涼しい部屋を望むのではないでしょうか。設計の仕事に携わってきた十数年の中には、陽の光の入らない薄暗く落ち着いた図書室のようなリビングを望んでいたり、全く光の入らない近未来的な空間を好まれたりという場合もあります。人の好みは様々ですが、光が入り、風が通る空間を望まれる方が一般的には多いと思います。

「限られた条件の中でどのように窓をつくるか」

「カドノイエ」

32.jpg「カドノイエ」の外観まず「カドノイエ」に焦点をあて、設計の時どんなことを考えていたか書いてみたいと思います。この家は繁華街が近いということもあり、通行人の視線を避ける目的で、部屋の吹き抜け上部に窓を計画しています。ほか掃き出しサッシを付ける部分は板塀で囲ったり、トップライトをとったり、換気用に小窓をつけたりと、家の中から気持ち良く外の景色を眺める窓、光を取り込む窓、風を入れる窓、外観のアクセントとなる見せる窓というようにそれぞれの窓の個性・役割を割り振ってつくりました。

世の中、立地にかかわらず無条件に南面に大きな掃き出しサッシのある家が多いですが、外部の環境にもよりますが、常にカーテンがかかっていないと!というのはいかがなものでしょうか。それぞれの場所にそれぞれの役割に合わせた窓の計画があると思います。

29.jpg寝室の窓また映画好きな夫妻の寝室はミニシアタールーム。プロジェクター、スクリーン、サラウンドシステムの配置を考えて準備し、壁は防音仕様、窓には光を遮る建具を取り付けています。ちなみにこれらの建具、閉じられるよりも開いていることが多いのです。だからといって閉じるときだけどこからか取り出してくるのも億劫です。建具の開いている時も納まりよくいられるようにちょっとした工夫で建具の居場所もつくっています。左の写真はハイサイドの窓の下に見える和紙張りの部分が遮光のための跳上式の板戸になっています。

r0010336.jpg「カドノイエ」の外観風通しのための小窓にも遮光のための板戸をつけました。開いているときにも敷居に玉締りで固定してあるのでパタパタしません。普段はつけないですが、壁に開いている時のための下枠をつけました。開いている時も敷居にちょこんとのった形となり、落ち着きます。

「松庵の家」

松庵の家_8755.JPGリビングスペースよく聞く旗竿敷地という言葉。この家の敷地は本当に旗竿の形で、東西南北ぐるりと建物に囲まれた家です。主に光を取り入れられるのはトップライトと南に向いたハイサイドライトのみ。かろうじて南隣の家の屋根を越えて陽の光を取り入れることができました。壁・天井を反射率の高い白色とすることで、より明るい空間となるようにしています。

R0022103.JPG階下に落ちてゆく光貴重な光は家の中心につくった、光を遮らないオープンな階段室から1階へとおちてゆきます。1階はほぼ隣家に囲まれ、階上からしか光の入ってこない状態ですが、1箇所だけ家と家の間に隙間が!午前のひとときの光を取り込む窓ができました。
ロフトは収納空間であるとともにお父さんの避難スペースです。ちょっと考え事をしたい時、ロフトに登り…声は聞こえど、ごろりと横になり、空を眺めてひと時を過ごす。トップライトはそんな窓でもあります。

松庵の家_8699.JPG隣家の隙間から差し込む光松庵の家_8848.JPGロフトから空を眺める

「太田窪の家」

_DSC4019.jpg西側からの外観この家は北側が接道で、東側は隣家があるけれど離れており余裕のある空間、西側は駐車場でその先に桜並木が見えます。そして南隣が非常に近く、高く建っています。問題のない敷地のように聞こえるかもしれませんが、光の取り込み方が意外に難しい家です。

解決策として南側にロフト階高さのルーフバルコニーをつくり隣地から離し、ハイサイドとなる窓を取り付けて光を取り込むことを考えました。その光は2階のスノコ状の床から1階へと落ちてゆきます。
_DSC0098.jpg視線の繋がるバルコニー設計の初めの段階では、建て主さんはダイニングと繋がるバルコニーを希望されていたのですが、バルコニー自体の光のあたり方+他の部屋への光の差し込みを考え、ダイニングから見上げる視線で繋がるバルコニーを提案し、その案で進むことになりました。ダイニングは階下へ光を落とすスノコ状の床へと繋がっています。

_DSC0075.jpg土間このスノコ状の床は建物を3分割するように中央にあります。一階は通り土間です。家の東側は隣家と距離があり、西側は当面家が建つ予定がないため、この空間を光で満たすように両端に大きな開口部をつくっています。片側は光を通すスリガラス、もう片方は桜を眺めるために透明のガラスにしています。西日も当たりますが、それ以上にメリットのある選択だと思っています。



まとめ

窓は大きさ、形状、形式、材質、色々選択肢があります。同じ開口サイズでも壁に対して開ける位置・ガラスの種類などで印象が大きく変わります。中からの眺めだけではなく、外観の印象にも大きな影響をあたえる窓は、いつもいつも考えていて楽しく、そして悩ましいモノです。

ここ数年で住宅用アルミサッシの防火性能で問題がみつかり、実はいま大変な過渡期なのですが、世間では意外に知られていないかもしれません。設計者はそれでずいぶん振り回されてきました。

今まで防火認定がとれていたサッシが実は性能を満足していないことが発覚し、新たな検査が始まっています。現段階で認定の取れている窓は非常に小さく、種類が少なく、コストが上がっています。防火地域・準防火地域では、以前に比べると大きな開口が開けられなくなってしまいました。各サッシメーカーが今必死で開発・試験を繰り返していると思いますが、以前のような大開口ができるサッシが出てくるのにどの位かかるか…。

そうはいっても、新しい商品が出てくるのをじっと待っているわけにはいかないので、こんな時だからこそ使えるものの中で工夫をして、今まで考えなかった窓の開け方も考えてゆかないとなと思っています。そういった工夫や思考も設計者の職能ですからね。


*上記の内容は2013.12.24.-12.28.に建築家31会のばとろぐ「bat-log」にて掲載されたものを1つの記事にまとめたものです。